洗車のプロが考える、「コーティング」とはそもそも何のためにあるのか?
街に出ると、ちょっと他とは違う輝きを放つぴかぴかキレイなクルマを見かけることがあります。
そのクルマには何らかのコーティングがされているのかもしれません。
そんな様子を見るに付け、次に新車を購入するときは絶対にコーティングしようと考える人もいると思います。
「洗車をあまりしないならコーティングした方が良いですよ!」とか
「青空駐車するなら良いコーティングをしなきゃダメですよ!」とか
こんな説明をクルマ屋さんから受けたことがあるのかもしれません。
クルマをたくさん販売しているプロが言うんだからそうなんだろう。。。
そう信じてしまいそうな、長い目で見た時のお客様の利益を考えたもっともらしい説明のように聞こえます。
勘違いされたくないので少しキツい言葉を使いますが、どんなに高価で素晴らしい技術で丁寧に施工したとしても、、、
たかがコーティングごとき
施工したからといって洗車もせずほったらかしでキレイさをずっと保ち続けるのは無理です。
コーティングとはそういう要望を叶えるものではありません。
これはクルマのボディーに限らず、お店やお住まいの窓ガラスや建材に使われる全てのコーティングにも当てはまります。
(例:床のコーティングであれば、しょうゆなどをこぼしたときにサッとひと拭きで拭き取れるのがコーティングのメリットであって、絶対にキズが付かないとか何のお手入れも要らないなんていうメリットは存在しません。あってもキズが付きにくいとかお手入れが簡単というメリットです。いずれ掛け直さないといけないというタイミングもあるはずです。掛け直せるコーティングであるかということも重要ということです。)
よって、もし優劣をつけるなら「洗車>>>コーティング」です。
美観維持の上で、コーティングは絶対にやらないといけないものではありませんが、洗車は絶対にやらないとダメです、間違いなく維持出来ません。
なので手間を掛けることに勝るものはないと断言します。
もし「コーティングさえしてあれば洗車しなくてもいい」と勘違いしてお手入れを何もせず放置するくらいなら最初からコーティングなんてしない方がいいと思います。
お金の無駄です。
事実、新車時に高耐久性のコーティングをしたにもかかわらず、わずか半年ほどで取れない染みが出来たなんて話しをよく聞きます。
クルマは高価な買い物です。気に入らないからとおいそれと買い替えることは普通出来ません。
少しでもキレイに保ちたい、少しでも洗車せずにキレイさを保ちたい、だからコーティングにその答えを求める気持ちもよく分かります。
しかし、猫も杓子もコーティング、どこでクルマを買おうにもコーティング。
まるで何とかの一つ覚えのようにコーティング。
そして、〇年保証、〇年耐久のコーティングが持てはやされています。
クルマを買う際には「今なら値引きします!」「値引きの代わりにコーティングをサービスします!」という道具にすらされているのがコーティング。
なんか芸がないと思いませんか?
コーティングってそんなに軽く扱っていいものなんでしょうか?
デメリットはないのでしょうか?あなたのクルマの付き合い方に合っているものなんでしょうか?
ただ単に芸がないだけならまだしも、お客様の期待通りにはならず「騙された!」「期待外れ!」となってしまうのがこのコーティングという代物です。
これは本当にあった話ですが、僕が勧めた訳でも施工したわけでもない新車時に施工したコーティングが最初のころしか役に立たず染みだらけになったということで「コーティングなんかダメだ!」となぜか何の関係もない僕が怒られる羽目になったことがあります。
それだけ裏切られたという気持ちが強かったのだと思います。
ではコーティングって実は使い物にならないのか?
いいえ、使いようによっては非常に便利なものとして使えます。
今回は「コーティングのメリットとはそもそも何なのか?」ということについて紐解いてみたいと思います。
耐久性という観点からコーティングを紐解いた記事はこちらから。
目次
あなたのクルマはすでにコーティングされているという事実
どんなクルマもメーカーから出荷された時点ですでにコーティングされています。
「えっ?」と思うかもしれません。
と思うかもしれません。
名詞としてコーティング(COATING)をウィキペディアで調べると、
物の表面を、定着可能な物質で覆うことの総称
(wikipediaより引用)
という風にあります。
動詞として調べると、
塗る、覆う
(ウィクショナリーより引用)
とあります。
よくよく考えると、クルマのボディ(鉄やアルミ、プラスチック)にはすでに塗装がコーティングされています。
次の項目で取り上げるコーティングの4つのメリットは、塗装だけでもその機能を果たしています。
忘れがちですがまずこれを認識しないといけません。
ボディに使われている素材(鉄、アルミ、プラスチック)を守るために塗られるもの、それが塗装です。
塗装を守るために塗られるもの、これがいわゆるコーティングです。
何を守ろうとしているのかで名称が変わりますが、動詞的に考えれば全てコーティングです。
ですからいわゆるコーティングをするということは、コーティング(塗装)をさらにコーティングしようとする行為だということです。
コーティングをすることで得られる4つのメリットとそれを活かす前提条件
- ゴシゴシしなくてもスルっとカンタンに汚れが落ちるため、力を入れずに洗車できること
- 水を弾くので、水滴の拭き取りが楽になり拭き残しにくくなること
- 色ツヤ輝きが増すこと
- コーティングが犠牲となり、塗装へのダメージを最小限にすること
実は、これらのメリットはボディ(鉄、アルミ、プラスチック)に施された塗装のみですでに機能しています。
ボディを塗装で守り、
塗装をコーティングで守ろうとするわけですが、
コーティングには何もしなくてもいいのでしょうか。
結論を先に言いますと、一番外側に塗られたコーティングは洗車して守るしかないんです。
コーティングを扱っているところ(施工・販売)というのは非常にたくさんありすでに広く普及してきているように思いますが、この考え方・説明・理解が大きくすっぽ抜けていることがあると感じます。
コーティングをわざわざ守らなければならないのには理由があります。
僕はコーティングのことを散々使い捨てだとか消耗品だとか言っていますが、お手入れをしなくていいとはひと言も言っていません。
ここであらためてコーティングをする目的をハッキリさせます。
第一目的:クルマをいつもぴかぴかキレイにしていたい(美観維持)
第二目的:なるべく手間が掛からないようにしたい
概ねこんな感じの目的でコーティングを掛けると思いますが、この希望を叶えるためには定期的に洗車が必要です。
勘違いしてはいけないこととして、洗車しなくてよくなるのではなく洗車に掛かる労力を減らすことが出来るだけです。
なぜ洗車しなければいけないかについては、3つ理由があると考えます。
洗車をしなければいけない理由①どんなコーティングをしていても汚れは付くということ
汚れないコーティングなんてありませんので、汚れたら美観を維持できないから洗車しましょう、ということです。これは比較的わかりやすい理由だと思います。
洗車をしなければいけない理由②コーティングで防げるダメージは限りがある
洗車せずにいたことでダメージを受ける時は、コーティングだけが全体に満遍なくダメージを受けるのではなく、大抵は塗装も含めて局部的にダメージを受けます。(ボンネット、屋根、トランクなどが顕著)
汚れた水滴が乾くことで、その水滴の範囲が局部的にダメージを受けています。
補充や入れ替えが出来るコーティングであっても、塗装に達する深いダメージを受けてしまったらコーティングだけでなんとかできる範囲を超えてしまいます。
洗車をしなければいけない理由③コーティングが痛んだとしても塗装が痛んだとしても美観を損ねることに変わりがない
コーティングは盲目的に過信できるほどには強くありません。条件がそろうとコーティングを突き破って塗装にダメージが達してしまうことがあります。そうなれば美観を損ねるのは当然です。
しかし、ダメージが塗装までいかずコーティングでとどまったとしても美観を損ねます。
厚塗りすればいいと思うかもしれませんが、ダメージの受け方は変わりません。
厚塗りしたところで塗装よりはるかに薄いのです。
豆腐を守るのにアルミホイルを敷いたところで、指でつつけば穴が空いたり豆腐が崩れるのと大して変わりません。
コーティングだけでダメージがとどまっている内に、入れ替えや補充をする必要があります。
そして、コーティングが高耐久性であればあるほど、無機質的な成分を半永久的に定着させていますのでコーティングが受けたダメージを視認しやすくなります。(黒系の塗装色は特に顕著)
お風呂場の鏡、あれがいい例です。(無機質の素材で耐久性が高いにもかかわらず、一番美観を損ねているということ)
都合が悪くなったからといって取り除こうにも簡単に取り除けません。
高耐久性はメリットでもありデメリットでもあるんです。
コーティングのメリットを最大限享受するために認識すべきこと
「コーティングしたら洗車しなくていいんじゃないの?」が全く通用しないというのがご理解いただけたかと思います。
洗車しないと純正塗装だけのときよりデメリットを強く受けます。(高耐久性であればあるほど)
そればかりか、もともとの目的すら見失い「やらなければ良かった。。。」という後悔するはめになるのは想像に難くありません。
コーティングを人間に例えると、、、
- 能力は高い
- だけどちょっとしたストレスに弱い
- マメにお手入れしてあげないとすぐにちんぶりかえって(拗ねて)しまう
- 間違ったお手入れだと余計にちんぶりかえって(拗ねて)しまう
- 一度ちんぶりかえってしまうと二度と依然と同じ能力は発揮してくれない
- ちんぶりかえる回数を重ねれば重ねるほどちんぶりかえりやすくなる
人間で言えばすごく扱いずらいヤツということです。(高耐久性であればあるほどより際立ちます)
また別の例えになりますが、高耐久性であればあるほど「一度装備すると外せない呪われた使い捨ての盾」と考えています。(分かりにくかったらスイマセン)
それでもわざわざコーティングするのはさきほど挙げた4つのメリットがより強化されるからに他なりません。
- ゴシゴシしなくてもスルっとカンタンに汚れが落ちるため、力を入れずに洗車できること
- 水を弾くので、水滴の拭き取りが楽になり拭き残しにくくなること
- 色ツヤ輝きが増すこと
- コーティングが犠牲となり、塗装へのダメージを最小限にすること
それを維持するには、定期的に洗車を行い汚れを落とし続けることが前提です。
そして、どんなコーティングであっても塗装と同じく劣化することは避けられません。
なので、その効果も少しずつ薄れていきます。
もし長い期間、これらのメリットを享受したいと考えるなら、
- コーティングはキズも入るし汚れもする消耗品であると認識すること
- コーティングを補充したり入れ替えたりできるものを使うこと
というのが僕の持論です。
手間を掛けることとセットで考える耐久性です。と言っても一回一回がそんな大変な手間でもないんですけどね。
僕が取り扱うピッチレスコートや窓ガラスコートはまさにこの特徴を備えています。
高耐久性のコーティングとは対照的です。
高耐久性のコーティングは、車検が来たらクルマを乗り換えてしまう人にはオススメします。(ただし、黒系の塗装色以外)洗車は水洗いだけで済みますし、傷やら染みが目立つころには乗り換えてしまうんですから、あとのことは知らないと割り切れる方に最適です。
※注意:高耐久性のコーティングをディスっている(否定)わけではありません。使いどころがあると言いたいんです。しかし、あまりに多くの方がそのデメリットを理解せず施工し期待とは違う結果を招いているのを見て、比較対象として強調した説明をしています。ご理解ください。
メリット① ゴシゴシしなくてもスルっとカンタンに汚れが落ちるため、力を入れずに洗車できること
詳しいことは下のリンク先の記事に譲りますが、、、
コーティングをしたことで「汚れの付きにくさ」を発揮するには条件がシビアです。
- コーティングが新しいうち
- 汚れが固着する前にまとまった量の雨が降ること
「汚れが付きにくい」というよりは、正確には「汚れを落としやすい」だと考えています。
ほとんど同じ意味にも取れますが、よくよく考えると全く違う意味です。
- 汚れが付きにくいは、洗車しなくても美観維持されるというニュアンスを含んでいます。
- 汚れを落としやすいは、労力を掛ける(洗車する)ということを前提としています。
どんなコーティング(たとえ高耐久であろうとも)でもメリットを享受したかったら洗車するしかないというのはここから来ています。
メリット② 水を弾くので、水滴の拭き取りが楽になり拭き残しにくくなること
ピッチレスコートや窓ガラスコートでは、撥水が効きます。
そのうえで行うバケツ一杯の水洗い洗車術においては
- 撥水効果によって出来た水滴に汚れが集められる
- 汚れた水滴を吸い取るように綿タオルで拭き取る(というか撫でる)
これによってゴシゴシすることなく、なるべくキズを付けずに汚れを落とすことを可能としています。
バシャバシャ水を掛ける洗車ではありませんので、細部に水が入り込んだりもしませんし、一切の水気を残さない拭き取りが可能です。
洗車を趣味としている方、クルマに携わるプロの方でもこのやり方のシンプルさ、確実さに驚かれます。
もし水気が残るようなら、、、
- 撥水が効いていない、または撥水が弱っている
- 綿タオルの水気が多すぎて吸い取り切れない
- 綿タオルに力を掛け過ぎている
この辺りが理由として考えられます。
水気の残さない拭き取りが出来ると水洗い完了後にピッチレスコートや窓ガラスコートの施工にすぐに入ることが出来ます。
いちいち乾くのを待つとか、ブロワーやエアー等を使って乾かすといった手間が全くありません。
というか僕はそんな道具を持っていません。出張洗車においてはそんな道具を持っていくことさえも出来ないんです。電源がない現場だってありますし。
メリット③ 色ツヤ輝きが増すこと
ピッチレスコートにおいては、砂ぼこり等が噛んで余計なキズを増やさないよう水洗いをしてから塗るだけとなっています。
ちなみに上記画像の右半分が施工済み、左半分は未施工です。見れば分かりますね。
真ん中の白いものは、ピッチレスコートを指で塗りつけた跡です。
それを塗り伸ばして右半分を施工しました。
ちなみにピッチレスコートにはコンパウンド等の研磨剤は一切入っていません。
使用したスポンジも塗装を研磨するほどの固さはありません。
ピッチレスコートを塗れば洗車キズが隠れますので、全体的に白っぽかった黒色塗装が引き締まります。
また塗装にピッチレスコートが染み込むと色が深く濃くなります。(上の写真を見れば一目瞭然です)
余談
ちなみに、高耐久性のコーティングの素晴らしい色ツヤ輝きは、コーティング剤そのもので出しているわけではありません。(多少はあるとは思いますが)
それよりもコーティングする前に、「研磨」と言って塗装表面をコンパウンドで削ってピカピカに磨くことで色ツヤ輝きを引き出しています。
コーティング剤を塗りさえすればそうなる訳ではないんです。
そして、高耐久であるがゆえのデメリットもあります。
こうした特性の違いから、ピッチレスコートと高耐久性のコーティングを単純にどちらが良いかとは比較できないんです。
どのようにクルマと付き合っていくのかという、まさに「人による」としか言いようがありません。
(どちらが好きかという僕の個人的見解は文章を読んでいれば分かりますね)
メリット④ コーティングが犠牲となり、塗装へのダメージを最小限にすること
いくらコーティングが犠牲になって守ってくれるとは言え、いつまででもという訳にはいきません。
特に「春のスギヒノキ花粉+黄砂」「潮風による塩害」「雪国の融雪剤」「鳥フン」「洗剤の残り」「水道水等に含まれるミネラル分」等による固着した汚れを2週間以上放置すると取れにくくなります。
このダメージを回避するには「洗車」しかないわけですが、汚れたらすぐに洗車を出来る人ばかりではありません。
なので洗車されるまでの間、コーティングが犠牲となって塗装へのダメージを防いでくれます。
そして、犠牲となったピッチレスコートの保護膜は補充したり入れ替えたりが可能というのが美観維持における大きなメリットです。
コーティングが高耐久性であればあるほど染みになりやすいというデメリットがある以上、汚れがコーティングや塗装にダメージを与え始めるであろう期間以上の耐久性は不要だというのが僕の考えです。
ただ人によっては、洗車キズや場合によっては染みさえもそこまで気にしないという人もいるかもしれません。お客様が要望するキレイさや洗車スタイル(ご自分でやる場合は)に応じて、求められる洗車は変わってきます。
しかし、絶対的な美観維持を誰もが求めているわけではありません。(キレイであるには越したことはないですが、費用や労力を天秤にかけると、、、ということです。)
そこそこで良しとする方にとっても、徹底的にやりたい方にとっても、美観を損ねてしまう塗装のダメージを最小限にしてくれて仕上がり具合をコントロールできる。
それがピッチレスコートや窓ガラスコートの特徴です。
まとめ
コーティングすることそのものが目的の人はまずいません。
コーティングによって何らかのメリットを享受するのが目的のはずです。
その目的を明確にして、メリットとデメリットが受け入れられるものならやればいいと思います。
受け入れられないのであれば、純正塗装のまま洗車することにお金と手間を掛けた方が得策です。
もしディーラーやショップでコーティングを勧められてどうしようか悩んだらこう聞いてみてください。
「そのコーティングにどんなデメリットがあるんですか?」
「そのデメリットをどう運用すれば解消できますか?」
答えられないところではたとえタダでもやるべきではありません。
施工がかなりいい加減なところもあります。
お客様にとってプラスになるどころかマイナスとなることも考えられるからです。
僕はコーティングのあるべき姿というものがあると思っています。
- 塗装の美観維持に対して必ずプラスであること
- 洗車で汚れを落としやすいこと
- 汚れもするし劣化もする消耗品という前提で、コーティング保護膜を補充したり入れ替えたり出来ること
- 塗装を痛めることがないこと
- 施工を止めた時に、機能しなくなったコーティングの残留成分が悪さをしないこと
そしてコーティングを施工するからには、施工するショップが理解していることはもちろんのこと日常的に洗車をするオーナーにもしっかり説明し理解してもらうことが必要だと思います。
ただコーティングを施工だけして洗車をしないというのでは、何の意味もありません。
しかし、特性を正しく理解し付き合っていけば10年後20年後も新車のような、ある意味新車以上の輝きを保てるのです。
僕はこのピッチレスコートをはじめとしたクリーティングWAX と出会って、クルマやオートバイを「本当の意味で大事にお手入れする方法にやっと出会えた!」と感動したことを覚えています。